21世紀型スキル

21世紀型スキル

考え方
① 創造性とイノベーション 知識を応用して新しい価値を生み出す力
② クリティカル・シンキング(批判的思考)、問題解決、意思決定 :論理的に考えて問題を発見・解決して意思決定する力
③ 学び方の学習/メタ認知(認知プロセスについての知識) 自分の思考を客観的に認識して、自分の意思で学ぶ力

働き方
④ コミュニケーション :他者に考えや感情を伝えたり、他者の考えや感情を受け取ったりする力
⑤ 協働(チームワーク) :一人ではできないことを他者と共同で行う力

働くための道具
⑥ 情報リテラシー :書籍、WEB、他者などから情報を得て、取捨選択し判断する力
⑦ ICTリテラシー :ネット検索やSNSなどの、ICT(情報コミュニケーション技術)を使いこなす力

世界での生き方
⑧ 市民性(ローカルとグローバル) 個人としてだけではなく、所属する集団の一部であることを認識して参画する力
⑨ 人生とキャリア :時間軸全体で人生を考えて、道のりを考える力
⑩ 個人的・社会的責任(文化的意識と異文化対応能力を含む) :個人的、社会的に責任を持ち、所属する文化と異文化を認識して適切に行動する力

小学校でのプログラミング教育が2020年から必修になります。「考える力が身につく」と言うのは確かに事実ですが、本音はプログラマーが不足してきたために経済界からの要請を受けた形です。しかし子どもたちが社会を生きる時代(2030~2070年!)という長い時間軸で考えると、本質的な問題はプログラミング教育が必要だという単純な物ではありません

STEAMラボでは、具体目標として「21世紀型スキル」の育成を行います。これは変化の激しい21世紀の社会にあっても、その都度学び、他者と共生しあいながら、新しい価値を生み出していくための能力として国際的に提唱されたスキルです。

なぜ21世紀型スキルが大切なのでしょうか?それを考えるために少しだけ歴史を振り返ります。


20世紀型教育のほころび

学習には優先順位があります。学ぶべき内容が無限にある一方で、人生は有限だからです。そして優先順位は時代によって変化します。例えば狩猟採集の時代であれば、植物や岩石を覚えることは死活問題ですが、英単語や化学式を覚えることに意味はありません。

今までの教育は、主に19世紀後半から20世紀前半の世界をベースに作られていました19世紀は蒸気機関による「第一次産業革命」によって世界が劇的に工業化した時代です。20世紀に入ると、電気による「第二次産業革命」が起こり、社会の工業化はさらに加速しました。工業社会とは、科学によって得た知識を数学に基づいて応用する社会ですので、科学や数学の知識が必要となります。そのため知識の量が重視され、教師から生徒へ可能な限り知識を伝達するというスタイルが定着しました

しかし20世紀後半になると、コンピュータによる「第三次産業革命」が起こります。決まった正解を繰り返し行う仕事は次々と機械に取って代わられました。さらに21世紀に入り、IoT(モノのインターネット)による「第4次産業革命」が起きつつあります。AI(人工知能)の発展による知的労働者の失業もすでに始まっています。もはやプログラミングを学べば職に困らないといった単純な話ではありません。今後世界は完全に予測不可能となり、課題や正解が比較的明確であった時代の教育では対応できなくなってきました。


国際学習到達度調査(PISA)の衝撃

こうして新しい教育のあり方が議論される中、経済協力開発機構(OECD)による国際的な学習到達度調査(PISA)が2000年に始まりました。これは15歳を対象として、本質的な学力を調べるための世界統一の学力調査です。この結果、アメリカやドイツなど科学立国を自負していた国々のプライドは粉々に打ち砕かれました。日本はかなりの好成績でしたが別の問題も見えてきました。それは大きく次の2つです。

「興味関心が低く、学ぶ意味を実感していない」

「応用力が弱い」

OECDのシュライヒャー教育局次長は日本の問題について次のように語っています。

(日本は)数学が将来の仕事に役立つ、もしくは、将来の仕事の可能性を広げてくれると考える生徒の割合はOECD加盟国中最も少なく、数学や科学の知識を自分たちの将来のキャリに結びつけて考えていないことに課題がある

(参考:日本経済団体連合会HP

成人を対象とした「国際成人力調査(PIACC)」の結果でも、日本人は知識レベルは高いが応用に弱いという結果が出ています。これに対してシュライヒャーは次のように語っています。

日本は高いスキルを社会で活用する面に課題がある。21世紀型社会で求められる能力は、知識ではなく、創意工夫をして問題を解決する能力や、人と協働して意思疎通を図る力、ITを使いこなす能力、起業家精神などであり、今後の日本の教育の課題は、それらの能力をいかに養成していくかにある

(参考:日本経済団体連合会HP ※一部抜粋)


21世紀型スキルの提唱

テクノロジーの進歩による、急激な社会の変化に端を発した教育改革の潮流は、PISAの結果に衝撃を受けた世界各国でかつてない熱を持って議論され始めました。その流れの中で、各国の研究者、政府、国際機関が連携して、21世紀に必要となる能力を「21世紀型スキル」としてまとめました。いまプログラマーが不足していることは事実でしょうが、子どもたちが社会を生きる2030年~2070年にどのような知識・技術が役立つのかを予測することは完全に不可能です日本(文部科学省)では「21世紀型能力」、EUでは「キー・コンピテンシー」などと名称の違いはありますが、断片化された知識や技能の伝達ではなく、人間の統合的能力をゴールに設定して教育政策をデザインするという大きな流れが生まれつつあります。STEAMラボでは、次にご紹介するSTEAM教育によってこの21世紀型スキルを育成していきます。